こんにちは、ペンタです!
今回の記事は、前回お話した前編の続きです。
それではどうぞ!
目次
前編のあらすじ
初めての立ち会い出産に挑むペンタ。
期待と不安、緊張を胸に妻の待つ病室にかけつけた
ペンタを待ち受けていたものとは!?
【苦しむ妻の隣で食べる気まずい食事!】
【看護師さんや助産師さんから目で見て盗んだ戦場(病室)で生きる術!】
【親指が折れるのが先か?心が折れるのが先か?
妻の腰を押し続ける試練を乗り越えろ!】
【水分補給と言う名のひとときの休息!】
そしてついに舞台は「病室」から「分娩室」へ!
そこでペンタが見たものは「希望」なのか!?
それとも、、、?
「立ち会い出産 漢の心得」 堂々の完結編スタート!!
立ち会い出産 漢の心得⑤ 「分娩室に移動しますよ」の一言にホッとすることなかれ!
真っ赤に腫れあがり、反り返った親指の痛みに耐えながら
妻の腰を押し続けること約4時間。
この無間地獄とも思える時間にも、
ようやく終わりの時が訪れました。
陣痛で苦しむ妻の子宮口が開いてきたので、
お産のため分娩室に移動する時が来たのです。
「そろそろ分娩室に移動しましょうか。」
そう言ってくれた看護師さんの姿が、
戦場に現れたナイチンゲールのように感じました。
やっと終わった、、もう押さなくていいんだ、、、。
ホッとした瞬間、自然と涙が頬を伝いました。(ウソ)
でも、心底ホッとしたのを覚えています。
僕の両手の親指は既に感覚がなくなっており、
押し続けた両腕と、思い切り押すために踏ん張り続けた両足は、
プルプルと痙攣を起こしていました。
妻が車いすで病室を後にし、ホッと一息、、、
つく間もなく、看護師さんから
「病室を片づけて、分娩室の方に移動してください。」
との次の指令が入りました。
僕は、満身創痍の体を引きずりながら
妻の入院道具などの荷物をまとめ(これが結構な量でした)
病室を出て分娩室に移動しました。
そうです。
分娩室に移動したからと言って、まだお産が終わったわけではないのです。
ここからまた新たな戦いが始まるのです。
ここまでで妊婦さんはもちろんですが、立ち会いをしている旦那さんもかなり消耗していることと思います。分娩室に移動したからと言って、すぐに産まれるわけではありません。一旦距離をとれたこの瞬間に、看護師さんに妊婦さんの様子を確認しつつ旦那さんも休憩を取って、次なる戦いに備えましょう。
立ち会い出産 漢の心得⑥ 自分の腕がへし折れるまで妻の首根っこを押し返すべし!
分娩室に移動し、ついに出産の時を迎えることとなりました。
僕は、既に疲労が限界を超えた体を
引きずりながら分娩室に入りましたが、
分娩台の上で苦しむ妻を見ると、
改めて気が引き締まる思いがしました。
先程の病室での僕の仕事は、
【体勢を変えるのに手を貸す】
【腰をさすったり、押したりする】
【お茶などの水分を口元に運ぶ】
【トイレに行くのに手を貸す】
【汗を拭く】
【励ます】
など多岐に渡りました。
「今度の戦場(分娩室)での僕の仕事は何だ?」
妻は分娩台に仰向けに寝ているので、
あの体勢だと腰を押すことはできない。(安堵)
引き続き水分を口元に運び、汗を拭く。
そしてドラマなどでよく観る、
妻の手を握り「頑張れ~」と励ますあのシーン。
どうやら僕に出来そうなのは、それくらいの様だ。
正直ホッとしました。
これなら何とか出産の瞬間まで、
そばについていられそうだ、と安心しました。
しかし、そんな僕の気持ちは一瞬で打ち砕かれました。
僕は忘れていたのです。
ここが戦場であることを、、。
そして戦場に必要なのは戦士だけだということを、、。
妊婦さんの陣痛はお産の瞬間に向け、
徐々に強くなっていきます。
そして分娩台の上では、
数分おきに押し寄せる陣痛に合わせて
思い切りいきむ事を繰り返し行います。
その「いきむ」ときに、最も力を伝えやすい呼吸法と体勢があります。
陣痛がくるタイミングで助産師さんから
「はい!いきんで~!!」
と声がかかります。
その瞬間、大きく息を吐きながら
分娩台に備え付けられたレバーを強く握って、
体を丸めるようにいきむのが良いそうです。
でも陣痛という強烈な痛みで、妊婦さんの呼吸は浅くなり、
体は力を入れようとすればするほど、
のけ反るように体を「ピンっ!」と伸ばしてしまいます。
そこで助産師さんから僕に、最後にして最大の指令が下されました。
「ご主人!いきむタイミングに合わせて、
奥さんの体が伸びないように首の後ろから押してください!
顔がお腹に付くようなイメージでグググッと強く押してください!!」
これがめちゃくちゃ大変でした、、。
妻は陣痛の強烈な痛みからか、
リミッターが外れたような、火事場の馬鹿力的な、
普段では絶対に出せないような、物凄い力で体を伸ばそう
としてきます。(もちろん無意識で)
僕はその力に負けないように、妻の首に手を当てて、
まるで腕相撲でもするかのように、押し返していかなければなりません。
皆さん忘れているかもしれませんが、
僕の体は分娩室に入る前の
【妻の腰を強く押す】
行為によって既にボロボロです。
そんな状態で、超人的なパワーでのけ反ってくる妻の首を
押し返さなければならないのです。
しかも、僕の腰の位置よりも少しだけ高い位置に設置された分娩台は、
微妙に踏ん張りも効かず、
ほとんど腕の力だけで押さなければならなかったのです。
そして、僕と妻との力相撲は、
赤ちゃんが出てくるまで延々と繰り返されるのです。
またまた無間地獄の始まりでした。
僕の腕が折れるのが先か!?
妻の首が折れるのが先か!?
僕の戦いは、赤ちゃんが出てくるまでの約2時間続きました。
立ち会い出産 漢の心得⑦ 看護師さんからたまに頂くお褒めの言葉に元気づけられるべし!
ついに始まった僕と妻との力相撲!
僕も大変でしたが、やはり妻の方が圧倒的に大変そうでした。
そりゃあそうです。
出産の痛みは、男性ではとても耐えられないものだそうで、
それが長時間続くので妻は本当に苦しそうでした。
その苦しさとは比べるべくもないのかもしれませんが、
僕も本当に辛かったのです。
指はプルプル、腕はバキバキ、足はガクガク、
そして無理な体勢で妻の首を押し続けているために、
腰も痛くなってきていました。
でも本当に辛かったのは、
「痛い」
とか
「辛い」
とか言えないことでした。
当たり前のことですが、病院のスタッフの方たちは妻に対しては
「もう少しだよ!大変だろうけど頑張って!!」とか
タイミング良く上手にいきめた時は
「上手!上手!今のいきみは良かったよ!上手だったね!」とか
妻の苦しさをやわらげるために、絶えず声をかけ続けてくれます。
僕も、自分が大変だ、辛いんだという気持ちを悟られないように、
時に笑顔で妻を励まし続けました。
なぜなら、
そばで一番苦しんでいる妻がいるのに、
僕も「苦しい、辛い」なんて思ってると思われると、
何だか夫失格の烙印を押されるような
そんな気がしたからです。
でもそんな僕の状況に気が付いたのか、一人の看護師さんが
「ご主人も今の良かった!さっきから上手に押してくれて、
奥さんも助かってますよ!」
「すごい戦力になってくれてますよ!」
と声をかけてくれました。
何だが救われたような、
報われたような気持になりました。
たったその一言で、
僕の体に少しだけ、元気が戻ったような気持ちになりました。
夫の頑張りは、見ている人は見てくれています。夫の最大のご褒美は、妻と赤ちゃんが無事に出産を終えることです。ここまで来ればあと少し!最後の力を振り絞って最後まで頑張りましょう!
立ち会い出産 漢の心得⑧ 感動のご対面を見逃すことなかれ!
妻の首を押し返し続けること約2時間。
ついにその瞬間がやってきました。
「赤ちゃんの頭がもう見えてるよ!次で頭が出てくるよ!はい!いきんで~!」
その掛け声とともに、妻が最後の力を振り絞っていきんだその時!
「はーい!頭が出たよー!!」
僕は、妻の首を押しながらその声の方に目をやりました。
妻の足の間から、赤ちゃんの頭が出ていました!
その光景は、
妻の足の間の何もない空間に、頭だけが出ているように見えたので、
不謹慎ですが、
何だかそこに生首が浮いているような感覚がありました。
だから僕は少しだけ
「うわぁ~、、怖」
とゾッとしました。
そして次のいきみで赤ちゃんの体が全部出てきました。
妻にとっては最後のいきみ、僕にとっては最後の首押しでした。
「はーい!赤ちゃん出たよ~!」
その声とともに、僕は疲労で膝から崩れ落ちました。
僕も妻も赤ちゃんが産まれた感動よりも、
「やっと終わった、、、」
という安堵感の方が大きく、
二人とも無言でグッタリしていました。
赤ちゃんが無事に産まれてきてくれれば、後から感動のご対面はいくらでもできます。終わった瞬間はイスなどに腰かけて、ゆっくりと息を整えましょう。
立ち会い出産 漢の心得⑨ どんなに我が身が辛くとも、大仕事を終えた妻をねぎらうべし!
出産が終わると、妻はしばらく分娩台の上で
出産後の処置をしていました。
僕はと言うと、とうに限界を超えて妻の首を押し続けていたので、
全ての力を使い果たし、
グッタリとうなだれてしまっていました。
何だか遠くの方で赤ちゃんが泣いている声が
聞こえるような気もしましたが、
顔を上げる元気もありませんでした。
そんな状態の僕でしたが、
僕にはまだ、やらなければならないことがありました。
気が狂いそうになる痛みに耐えて、
赤ちゃんを産んでくれた妻に対して
感謝とねぎらいの気持ちを伝えたかったのです。
僕「、、、、、」
でも、疲れすぎて声が出せませんでした。
しばらく座って休んでいると、
妻の産後の処置も終わって先生が分娩室から出て行き、
看護師さんたちが片付けを始めました。
僕はようやく立ち上がることができ、
分娩台に歩み寄り妻の顔をみました。
陣痛の始まりから出産が終わるまでの数時間、
苦しんでいる妻を見続けていたので、
出産が終わり安らかな顔をしている妻を見て、
本当に安心しました。
そして、
「大変だったね、お疲れさま。ありがとう。」
と言いました。
いろいろ伝えたいことがあったはずなのに、
妻の顔を見た瞬間、その言葉しか出てきませんでした。
でもその言葉だけで伝わったのか、妻はニッコリ笑っていたと思います。
戦場を生き延びた戦友のように、共に出産と言う大仕事を終えた妻とは、多くを語らずともきっと気持は伝わるはずです。お互いの顔を見た、その瞬間の素直な気持ちを言葉にして伝えましょう。
立ち会い出産 漢の心得⑩ どんなに腕が震えようとも、気力を振り絞って写真を撮るべし!
出産直後は、妻の産後の処置とともに、
赤ちゃんも体を洗ったり、
何か異常がないかなどのチェックがあります。
それが終わると、ついにご対面の瞬間がやってきました。
妻は分娩台から動けないので
僕だけが赤ちゃんのそばに呼ばれました。
そこで初めてまじまじと見た僕の赤ちゃんは、
本当にかわいくて愛らしい顔をしていました。
そして看護師さん立ち会いのもと、
目や耳はちゃんと二つあるか、
鼻の穴も二つ開いているか、
口は一つか、
手足は二本ずつあって、
指はそれぞれ五本ずつあるか、
など身体的異常がないことを確認しました。
その時は、疲労で頭がボーっとしていたのもあり、
「一体何の確認をしているんだろう?」
と思いましたが、
後で考えたらとても大切な確認をしていたんですね。
確認が終わると、看護師さんから
「抱っこしてみますか?」
と聞かれました。
でも僕は、
と、きっぱりと断りました。
当然です。
腕はバキバキで上がらず、足はガクガク、
手の握力はなくなり、プルプル震えているのです。
そんな状態で抱っこして落としたりしたら大変なので、
その時は辞退しました。
あと僕は産まれたての
赤ちゃんを抱っこした経験がなかったので、
どういうふうに抱っこしたらいいか分からなかったし、
ちょっぴり怖かったのです。
僕が抱っこを辞退すると
「それじゃあ、お写真お撮りいただいて大丈夫すよ」
と看護師さんが写真撮影を促してくれました。
僕は震える手で、一枚だけ写真を撮りました。
なぜかその時僕は
「何枚か写真を撮っておく」
と言うことをすっかり忘れていました。
あとで写真を確認したのですが、
そのたった一枚の写真は手が震えていた事もあり、
ピントがボッケボケでブレブレの写真でした。(T_T)
産まれたての我が子の写真が撮れるのは、産まれた直後のこの時だけです。あとで確認した時に失敗した写真ばかりで後悔しないように、写真は「コレでもかっ!」てくらいに撮りまくりましょう。
終章 ~エピローグ~
こうして僕は、無事にまーくんに会うことが出来ました。
その後の僕はと言えば、
しばらく両手の親指が痛くて仕事や日常生活に支障が出ました。
腕から首、背中にかけてはコリが酷く、
マッサージに通う日々を余儀なくされました。
最も辛かったのが腰痛で、
立ったり座ったり歩いたり、
何をするにも腰に激しい痛みがあり、
しばらくしてから右足のしびれも発症しました。
マッサージや整体、鍼灸などをやっても全く効果がなく、
たまらず病院に行くと【腰椎椎間板ヘルニア】との診断でした。
これが完治するまで2年半の月日を要しました。
これが僕が体験した立ち会い出産です。
立ち会い出産における夫の役割は、
僕のように病院スタッフの一員のように働く「参加型」か、
ドラマのようにそばで励ますだけの「ドラマ型」があります。
どちらのタイプかは、出産する病院の方針によります。
今回僕が経験した「参加型」は本当に大変でした。
でも僕は「参加型」で良かったと思っています。
最初に(前編で)ご紹介した、立ち会い出産をした経験談の
・「頑張れ」とか、励ましの声をかけられるのもイライラした。
と言うのは、おそらく「ドラマ型」だったのだと思います。
僕がもし出産をする側の妊婦さんだったら、同じように思うかもしれません。
「あなたと私、二人の子どもを出産しているのに、
自分だけが陣痛で辛い思いをしている。
こんなに頑張ってるのに、
無責任に頑張れとか言ってんじゃねぇよ!」
と思ってしまうかもしれません。
また、
・苦しんでいる私(ママ)を見て、ただオロオロするばかりで役に立たなかった。
という体験談は、立ち会い出産は「参加型」だったけど、
夫は何をすればいいかわからずに、ただ見てるだけになってしまい、
結局役に立たなかった、頼りなかった、
と思ってしまったのだと思います。
こんな風に思ってしまったら、
その後の生活に禍根が残ってしまうかもしれません。
こんな経験をしてしまうくらいなら、
立ち会い出産などやめて、
赤ちゃんが産まれるまで、病室の外で待っている方が
よっぽど良いと思います。
最初から立ち会い出産を選択しなければ、
妊婦さんも
「夫は何の役にも立たない」
とか
「(妊婦さんの視界に入るところに夫はいないので)鬱陶しい」
とか思うこともないからです。
僕が「参加型」の立ち会い出産で良かったと思えているのは、
看護師さんや助産師さが、僕を
同じ戦場で戦う、戦友のように扱ってくれたから
だと思います。
僕をただの一兵卒のように扱い、
ヘロヘロになるまで働かせることで、
妻からも
「一緒に一生懸命頑張ってくれた」
という評価がもらえるようにしてくれたのだと思います。
良い解釈をしすぎだと思われるかもしれませんが、
そのおかげで僕は妻から
「役に立たなかった」
とか
「鬱陶しかった」
と思われることもなく、
「一緒に頑張ってくれた」
と感謝されています。
これから立ち会い出産を迎える方たちは、
出産を予定している病院に、立ち会い出産の際の夫の立ち位置は
「参加型」か「ドラマ型」か
確認してみた方が良いかもしれません。
そしてもし「ドラマ型」なのであれば、
立ち会い出産にするかどうかを
もう一度話し合ってみても良いかもしれません。
「参加型」なのであれば、夫は安易な気持ちを捨て、
ボロボロになる覚悟で立ち会い出産に臨んだ方がいいと思います。
立ち会い出産の時の夫の対応によって、
その後の夫婦の関係が善くも悪くもなる可能性を秘めています。
その点、我が家の場合は、
一緒にボロボロになって出産を頑張ったことで、
夫婦の絆が強くなったように思います。(´ー`*)(´ー`*)ウンウン